鬼マサ日記

その昔、鬼マサと呼ばれていたという父親の話である

鬼マサの霍乱(かくらん)

その昔

 

鬼マサと呼ばれていた父が

 

 

42歳の頃のこと

 

 

私の記憶では

 

それまで病気らしい病気をした事など

 

なかったように思うのだか

 

 

 

何をしていたのか

 

ある日ギクッ!!!と

 

やってしまったらしい

 

 

ギックリ腰だ

 

 

 

ギックリ腰になった人など

 

けっこう周りに多くいるもので

 

そんなに珍しくもないのだが

 

 

 

父は若かりし頃

 

空手を師範レベルでやっていたといい

 

(本人がそう言ってるだけだが)

 

 

蛍光灯にぶら下がっているスイッチの紐を

 

ハイキックで蹴り上げては

 

どうだ〜凄いだろ〜と

 

得意げな顔をし

 

 

まだ小学生だった頃の弟に

 

やってみろと無理な事を言い

 

もちろん出来ないわが息子に

 

勝ち誇ったような笑い声を

 

浴びせかけていた

 

 

 

そんな父が

 

ギックリ腰とは!

 

 

それもかなり痛みがひどいようで

 

 

脚をひきずりながらでも

 

歩けるならまだしも

 

それもままならず…

 

 

 

四つ這いになり

 

片足の膝を座布団に乗せ

 

 

まるででかい尺取り虫のような動きで

 

ズリズリ〜

 

ズリズリ〜と

 

 

寝室からトイレまでの廊下を

 

這って進んでいた

 

 

 

母も私も勤めに出ていたため

 

そんな父につきっきりとはいかず

 

 

 

その日遠足だった高校生の妹が

 

父の介護のためという理由で

 

学校休み世話をする事になった

 

 

42歳の父の介護のため

 

楽しみにしていた遠足を諦め

 

父に付き添う健気な妹……

 

 

などという

 

そんな泣ける話には

 

なるはずもない

 

 

 

姉の私が言うのもなんだが

 

妹は頭が良かった

 

頭は良いが

 

やる事が少しぶっ飛んでいた

 

 

 

母も私もそんなことは

 

すっかり忘れていた

 

 

………で

 

 

やはり父は妹にヤラれた

 

 

座布団に乗って

 

トイレまで廊下を這い進んでいる

 

そんな父を見て

 

妹はふと思いついた

 

 

あれ?お馬さんがいるよ〜

 

わーいわーい♬

 

 

そして

 

 

父に馬乗りになった

 

 

ギャッ!!グギッ!

 

ブォゲ〜!!!

 

 

父のために遠足を休んだ妹は

 

その父にこっぴどく叱られた

 

とはいえ四つ這いで

 

座布団ズリ〜の父である

 

妹は全くダメージを受けなかった

 

 

そして祖母には

 

叱られるどころか

 

賞賛された

 

 

 

高校生の女の子が

 

学校を休んでまで

 

父親の世話をしている

 

この子はなんて優しくて良い子なんだ

 

…と、褒めちぎられ

 

新品の自転車をゲットしていた

 

 

 

その後

 

父がどれくらいの間

 

座布団ズリズリ生活をしていたのかは

 

全く記憶に無い

 

 

ただ

 

自転車をゲットし

 

正当??な理由で

 

学校をサボる事が出来た妹が

 

 

鬼マサよりも

 

鬼じゃないかと

 

ふと思ったりした

 

 

  

そんな鬼マサの霍乱の話

 

 

 

鬼マサ日記は

 

まだまだ続く…

 

 

 

 

 

 

笑わせるどころか…

前回の続き

 


3往復目の白鳥の湖が通り過ぎようとした
その瞬間!
 
『ちょっと!まーちゃん!テレビ見よるんやけん!もうやめてや!』


母親が叫んだ!!!
まーちゃんとは父のことである
 
あ〜ぁ、母が父のしつこさに負け
その存在を認めてしまった
 
この段階になると
もうドラマの内容は
よくわからなくなっている
 
動きを止めニヤリとした父

『はるちゃん、僕踊り上手やろ〜🎵』と
ひとり嬉しげだ


とうとう根負けし
声をかけてしまった母(はるちゃん)
 
父の嬉しそうな顔を見ると

怒りを通り越し呆れ顔になった


『はいはい、もぉ〜、踊りが上手なのわかったけん!早よ寝なはい。』と
父を寝室へと促す
 


実はすでに白鳥の湖には
飽きていたのだろう

 


父は母の言葉を聞き終わる前に
『はーい、おやすみ〜〜。あはは』
と、あっさりその場を後にした
 


そんなこんなで

父と母のお遊びは終了するのだった
 


しつこく踊る父には
ほとほと呆れてしまうのだが
 
毎回あのしつこさに苛立ち
最終的に半ギレで怒る母にもまた
呆れてしまう
 


今思えば
仲の良い夫婦の少し変わった
コミュニケーションの形だったのだろう

 


クルクル回る父は
どう見ても鬼マサと呼ばれていたとは
考えられない
 


そう…どちらかといえば
母の方が鬼の形相だったと記憶している


 

 

 

鬼マサ日記は

 

まだまだ
つづく…

鬼マサ家族を笑わせる?

その昔

喧嘩っ早いせいなのか

『鬼マサ』と呼ばれていたという父

 

 

そんな父は
ふざけたことをして
家族を笑わせようとするのが好きだ
 
特に母はそのターゲットとなる
 
笑わせるだけならまだしも、
ふざけた事を延々とやり続け
 
しまいには母を怒らせる
…という事もしばしばだ
 
実際そんなエピソードは
数えきれない程ある
 
その中でも定番はというと

お風呂上がりの『パンいちダンス』だ
 
書いて字のごとく

パンツ一丁で踊るというものだ
 
夜、母と私がリビングで
2時間ドラマを真剣にみていると
風呂上がりに必ずやってくる父
 
1980年代、私の住む田舎町では
男性の下着が
やっとブリーフからトランクスへ
移行中の時代
 
あんなスースーするもん履けるか!と
頑なにトランクスを拒んでいた父は、
いつもまとめ買いの
白いブリーフを履いていた
 
風呂上がりに
そのブリーフの両端を人差し指と親指で
ちょっとだけつまみ


横にピーンと引っ張り
クルクルと回りながら
テレビと私たちの間を通り過ぎていく

 

そしてまた反対方向から
クルクルと回りながら
そこを横切るのである
 
BGMはお決まりの白鳥の湖

 

ターリラリラ ラーララーラと
口ずさんでいる


母と私を横目でチラチラ見ながら
笑わせようと狙っている
 
私たちは
そんなもん見えてませんよ〜
というスタンスで
 
クルクルとテレビの前を行き来する父を
完全に無視し

テレビに釘付けです!
という態度を保っていた
 
しかし、隠しきれない眉間のシワと
弾きっつった顔を、
父は見逃していなかった…

 

続く

父は鬼マサ?

私の父はその昔
『鬼マサ』と呼ばれていたらしい
 
お酒を飲んで

ちょっと気分が良くなると

自慢げによくその話を

聞かされたものだ
 
ただ喧嘩っ早くて

他人から怖がられていたというだけの

その話を、それはまあ嬉しそうに

自慢げに話す父


右の耳からから左の耳へと

話を八割がた抜かしつつ

相槌を打っていた
 
子どもには甘い父だったため

当の鬼マサの娘である私は

父に鬼的な要素が

まったくと言っていいほど感じられず

 

ほろ酔い気分で

面白おかしく話している


作り話だろうといつも思っていた